MENTAL

雑念があってもOK!? こだわらないマインドフルネスのススメ—川野泰周先生『脳がクリアになるマインドフルネス仕事術』体験セミナー

トップアスリートのトレーニングや一流企業の研修などに取り入れられ、今注目を集めている「マインドフルネス」。しかし、「厳しそう」「難しそう」と思う方も多いのではないでしょうか。でも実は、マインドフルネスって、結構簡単に実践できるものだったんです。

9月25日、千駄ヶ谷駅から徒歩5分の場所に位置する「ZERO GYM」において、『脳がクリアになるマインドフルネス仕事術』体験セミナーが行われました。講師は禅僧と精神科医の二つの面を持つ川野泰周先生。今回のセミナーは先生の新著『脳がクリアになるマインドフルネス仕事術』(クロスメディア・パブリッシング)出版に合わせて開催されたもので、会場は定員ちょうどの30名のお客様で満員に。質疑応答の時間には次々に手が上がり、大いに盛り上がりました。

 

「食べるだけ」の行動もマインドフルネスにできる

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川野先生の優しい語り口でセミナーが始まりました。「宗教的で怪しい」「厳しそう」といったマインドフルネスについてまわるイメージを、理知的な言葉で解きほぐしていく川野先生。一通りのセミナー概要が説明された後、さっそく2分間の瞑想を体験します。

「まずは自由に瞑想してみてください。」

その言葉に目を閉じてみますが、なかなか瞑想に集中できません。瞑想とはどのように行うべきなのでしょうか……。長い2分間が過ぎた後、「瞑想に集中できた」と答えた人の数は客席の三分の一程度でした。そんな中、次の瞑想法が指示されます。

「では、例のものを出してください。」

川野先生の言葉とともに配られたのは2粒のレーズン。「まずは普通に1粒目を食べてみてください。」と言われるままにレーズンを口に含みます。すると、そのままの状態で計算問題をするように指示が出ました。食べ終わると、口の中に何もない状態でもう一度計算問題をこなします。

「食べている時と食べていない時、どちらも同じくらいできたという方はどのくらいいらっしゃいますか?」という問いかけに、ちらほらと手が上がります。まるで脳トレのようでしたが、先生の次の一言でそうではないことが明らかになりました。

「実は、食べることと計算が同時にできた方がいいとは限らないんです。」

川野先生によると、マインドフルネスを体に染み込ませている人ほどこの実験ではうまく計算できなくなる傾向があるそうです。これは、食べているときには食べていることに集中しようというスタンスを持っているから。反対に、食べることと計算が同時にできる人はマルチタスクに慣れています。言い換えると、別の事柄を思い描きながら目の前のことをこなしている状態。こういった「気が散っている」状態では、脳がエネルギーを過剰に消費し、疲弊してしまうといいます。

「もう一粒食べてみましょう。」

今度は、口に含むまでに以下の指示が出ました。

 

①目を閉じて深呼吸する

②目の前にレーズンを持ってきて、よく観察する

③鼻の前にレーズンを持ってきて、香りを嗅ぐ

④もう一度目の前に持ってきて、食べたときにどんな味・食感なのか想像する

⑤レーズンを上唇と下唇で挟んでその感触を味わう

⑥口に含んで、噛まずににじみ出る味を感じる

 

長い行程を通して味わうと、驚いたことに、1粒目と同じレーズンとは思えないほど味の記憶がはっきりと残ります。

「この実験では、日本人が世界で一番早くレーズンを食べ終わってしまうんです。それくらい激しいスピードの中で私たちは生きているということ」と川野先生。

「マインドフルネスを難しく捉える方が多いのですが、何かに対して初めてのように体験することができたら、それがマインドフルネスということなんです。」

その言葉に、2粒目のレーズンの味の新鮮な記憶が蘇ります。「食べるときに食べるという行為に集中して食べるということが、マインドフルネスの一番重要なところ」という言葉は、レーズン実験後では実感として理解することができました。

 

呼吸瞑想にチャレンジ!

 

「いま、目の前のこと」ではないことで頭がいっぱいになっている状態は、無用な雑念で仕事の効率を下げ、精神的ストレスを抱える原因にもなります。スライドのデータの数々は、マインドフルな状態(=マインドフルネス)であることがストレスを軽減し、幸福感を高めることを示していました。

こうしてマインドフルネスの理論を一通り学んだところで、「では、マインドフルネスのやり方で瞑想していただきたいと思います。」と先生。

川野先生が著書で基本的な瞑想として挙げている「呼吸瞑想」を、とうとう実践するときです。

川野先生の穏やかな声で、呼吸瞑想の段階が丁寧に語られます。

 

①まず、今に意識を置きます。

②鼻の穴を通る息の流れか、お腹の動きのふくらみとしぼみ、どちらかに注意を向けます。

 

座禅では目を半分閉じるのが基本だということですが、「あえて目を閉じて自分に向き合うのもいい」とルール設定は柔軟。「雑念を取り除くための瞑想なのに、雑念がなくならない……。」そんな不安を見透かすように、先生の優しい言葉がかかります。

「必ず始めて数秒経たないうちに雑念が出てきます。それは当たり前の脳の機能。雑念が出たことに気づいている自分を褒めてあげてください。」

瞑想という言葉から連想する厳しいイメージからすると、とても意外です。

「雑念が起こったことに気づいている時点で、雑念はだんだん消えていきます。」その言葉を頼りに、椅子に座ったまま目を閉じました。手の置き場所も、姿勢も自由。静寂に包まれた「ZERO GYM」で、微かに聞こえる車の音に意識が向かいます。

呼吸の様子を観察しようとすると、なかなかうまく息が吸えません。しかし、「これも雑念!」と受け入れると、今度は「自分の体が存在している」という感覚に強く意識が向いていきました。呼吸瞑想をするまで得られなかった感覚です。

気がつくと、あっという間に2分間が過ぎていました。セミナーのはじめにも行われていた瞑想体験。しかし、マインドフルネスという状態についての説明の後では、集中力が段違いに変わりました。「雑念を消すのが目的ではなく、雑念が出たらそれを戻すこと自体がマインドフルネス」という言葉は、瞑想へのハードルを格段に下げてくれました。

 

形式にこだわらないで「マインドフルネス」になる

 

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質疑応答の時間になると、来場者からは質問が次々に飛び出してきました。呼吸瞑想を実際に行ったことで、実践法について具体的な質問が集まります。

「瞑想の方法が間違っているのではないかと不安になるので、自分で進み具合を確認する方法はないでしょうか?」という質問には、「どれぐらい瞑想が進んでいるかということに意識を置いた時点で、それ以上瞑想できなくなるんですよ」という答えが。

セミナー中にも、「何かを得ようという気持ちに執着が行くと、肝心の呼吸に注意がいかなくなる」と、効果を第一目的にした瞑想に対する注意喚起をされていました。

さらに、マインドフルネスの実践でいつのまにか上司から叱られることがなくなっていたという患者さんの例挙げられ、「自分の価値観が変わる前に、自然にありようが変わっていくのがマインドフルネスの素晴らしいところ」と川野先生。

「正しいやり方」という形式に囚われることなく、マインドフルな状態になろうとすれば、自然に変化がおとずれる。この実践しやすさが、マインドフルネスのミソかもしれません。

 


新刊紹介

脳がクリアになるマインドフルネス仕事術 ビジネスパーソンのためのマインドフルネス入門講座(Business Life)

 

マインドフルネス書影2

川野泰周 著・柳内啓司 編著 クロスメディア・パブリッシング刊

 

今回のセミナーの講師である川野泰周先生が、ビジネスパーソン向けにマインドフルネスを解説する本書。

序章では、「そもそもマインドフルネスとは一体なんなのか?」「どんな効能があるのか?」といった素朴な疑問を一から解消していきます。

第1章では、「呼吸瞑想」「歩行瞑想」など、マインドフルネスを実践するための 基本的な方法を解説。

第2章では、マインドフルネスを実生活において活かすための具体的な方法をお話しします。「満員電車が辛い」「仕事中に集中が途切れる」「休日も仕事のことが頭を離れない」など、現代ビジネスパーソンのストレス源を14 点 取り上げ、「つり革瞑想」「キーアクション」などの解決策を図解入りで示しています。

第3章では、現代においてマインドフルネスが求められる背景と、科学的エビデンスを検証。

第4章では、マインドフルネスを習慣にした人がどのような変化を得られ、周囲にどんな影響をもたらしていくのかをお伝えしていきます。

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