MENTAL

ストレスだらけの脳をリセットする「マインドフルネス」とは何か?その意味と体感方法とは?

疲労・ストレスに効く、集中力や判断力を高めるなど様々な効果があると話題のマインドフルネス。『脳がクリアになるマインドフルネス仕事術』(クロスメディア・パブリッシング)は、「禅僧の精神科医」として現代のビジネスパーソンが抱える多様な問題を解決してきた川野泰周氏による”ビジネスパーソンのためのマインドフルネス入門書”だ。「マインドフルネスとはなにか?」「どんな効果があるのか?」「どうやってやるのか?」そんな疑問に川野氏が答える。

Side view of a happy attractive man resting and breathing sitting on a couch at home with a window with a green background outdoors

マインドフルネスとは何か?

 

——とある禅寺にて。ビジネスパーソン・A氏と、マインドフルネスの専門家である「先生」の会話——

 

A氏:先生、マインドフルネスとは一体なんなのでしょうか? ネットで検索してみましたが、「今、ここ」がどうとか、抽象的でよくわからないのです。

先生:では、簡潔にお伝えしましょう。マインドフルネスとは「あれこれ考えず、 ただ目の前のことに集中する姿勢」です。そして、その状態に至るために 「瞑想」などの方法があります。

A氏:えっ、瞑想? 私、そういう非科学的なものはあまり……。

先生:マインドフルネスは決して非科学的なものではありません。心身が整う、 集中力や決断力が上がるなど、さまざまな効果があることが科学的に証明 されています。それに、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、松下幸之助、 稲盛和夫といった一流の経営者たち、さらにはマイケル・ジョーダンやイチローといった一流のスポーツ選手は、みな瞑想の習慣を持っています。 マインドフルネスは、世界中のハイパフォーマーたちが実践している究極の「仕事術」とも言えるのです。

 

 

脳トレでも休息法でもなく「ただ目の前のことに集中する姿勢」

 

近年、ビジネス界の一大トレンドとなっている「マインドフルネス」。2007年、Googleがマインドフルネスを基にした研修プログラム “Search Inside Yourself(SIY)” を開発したのを皮切りに、Apple・Facebook・Intel・IBM・マッキンゼーといった一流企業が次々に取り入れ、世界中に浸透し始めています。

マインドフルネスは「瞑想法」「脳トレ」「ストレス解消法」「休息法」などとして知られていることが多いのですが、正確に言えば、「状態」となります。「今、この瞬間の体験だけに意識を向けている(マインドフル)」+「状態そのもの(ネス)」なのです。

これだけだと釈然としませんね。抽象的で小難しい、つかみどころがないと思われたかもしれません。

しかし、がっかりする必要はありません。実はマインドフルネスにおいて、この定義づけにこだわる必要はまったくないのです。ざっくりと、

「あれこれ考えず、ただ目の前のことに集中する姿勢」

ぐらいに考えていただくとよいでしょう。

あれこれというのは過去や未来のこと、他人の考えなどの、自分の目の前のことではないこと(=雑念)です。

 

マインドフルネスを体感する思考実験

 

ここで一つ、思考実験をしてみましょう。

左右どちらかの手のひらを目の前に持ってきてください。それから、息を大きく吸って口をすぼめ、長く、均等に息が当たるように、手のひらに吹き続けてください。できるだけ長く、均等にです。
さて、息を吹き続けている間、どんなことを考えていましたか?

「長く、均等に息を吐くこと」にひたすら集中していたのではないでしょうか。あるいは、「手のひらに息が当たっている感覚」を、意識し続けていたのではないで しょうか。それ以外のこと、たとえば昨日の夕食や明日の仕事のことには意識が向かなかったはずです。さらに、「息を吐くことはいいことだ・悪いことだ」などといった評価や判断もしていなかったのではないでしょうか。

今、この瞬間に知覚しているもの、湧いてくる感情、渦巻いている思考に意図的に意識を向け、それに対し、よい・悪い、好き・嫌いなどの価値判断をしない。ただ認識し、観察し続ける。これがマインドフルな状態(=マインドフルネス)なのです。

[※この実験は、2回目からは何を目的としているかを知っているため、意味がなくなってしまいます。ご注意ください。]

 

雑念をなくして脳をクリアにするリセット法

 

「今、目の前のこと」ではないことに脳を支配される、例えば会議中に昨日の夕食や明日の打ち合わせのことなどが思い浮かんで上の空になる、といった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。2010年のハーバード大学のキリングスワース博士らの研究によると、驚くべきことに、「人間は活動中のおよそ50 %もの時間を、目の前のことに注意を払わずに過ごしている」ということがわかっています。

脳内がこのように雑念で支配されていると、以下のようなデメリットがあります。

 

  • すべきことに集中できない
    雑念の情報処理に注意が向かうと、注意資源が分散され、目の前のことを処理できなくなります。
  • 脳が疲弊する
    余計な脳内エネルギーを使うために脳が疲弊してしまいます。
  • 幸福感が下がる
    ほとんどの悩み、つまりネガティブな雑念は、過去か未来のどちらかからやってくるものです。たとえば「プレゼンに失敗してしまった。評価が下がるにちがいない」という悩みであれば、失敗は過去のことですし、評価は未来のことです。それを引きずっていると、目の前で起きていることがたとえ嬉しいことであっても、十分に味わえなくなります。

 

「今、目の前のこと」に集中することで、余計な雑念がなくなり、 脳をクリアでフラットな状態に戻すことができます。すると、本当に必要なことにだけエネルギーを向けることができます。

マインドフルネスは、脳をクリアにするリセット法なのです。

 

「マインドフルネス=とっつきにくい」の誤解

 

マインドフルネスや瞑想と聞くと、「難しそう」「宗教っぽい、スピリチュアルなもの」「何十分も座禅を組んでやる厳しい修行」などと思われてしまうことがしばしばあります。

確かに、マインドフルネスの起源は仏教にあります。中でも「禅宗」は、坐禅修行をはじめ、掃除・食事・草むしりなど、 「今、目の前のこと」に集中して取り組むことがそのまま修行になっていますし、マインドフルネスを欧米に広めたジョン・カバット・ジン博士も、 若いころから禅宗の指導者に師事して禅を学び、その修行法を西洋科学と融合させて「マインドフルネス・ストレス低減法」を開発したことを明らかにしています。

しかし、マインドフルネスは怪しいものでも宗教でもありません。その効果は数多の最先端研究によって科学的に証明されています。

さらに、厳しい修行や複雑な動作をしなければならないものでもありません。「あれこれ考えず、ただ目の前のことに集中する姿勢」が、そのままマインドフルネスの実践になります。

実践しやすい方法として、「座って自分の呼吸に意識を向ける」などの「呼吸瞑想」がありますが、あくまでもそれは、マインドフルネスを目指すための一つのアプローチに過ぎません。

「今、この瞬間にやっていること」、たとえば歩いているなら、足の裏が地面につき、離れていく感覚に集中する。これだけでマインドフルネスを実践していることになるのです。

 

川野 泰周(かわの・たいしゅう)
精神科・心療内科医/臨済宗建長寺派林香寺住職。1980年横浜市生まれ。2004年慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院などで精神科医として診療に従事したのち、2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行。2014年末より臨済宗建長寺派林香寺住職となる。現在寺務の傍ら都内のクリニック等で精神科診療にあたっている。うつ病、不安障害、睡眠障害、依存症などに対し、薬物療法や従来の精神療法と並び、禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に導入。またビジネスパーソン、医療従事者、シニア世代などを対象に幅広く講演活動を行っている。

『脳がクリアになるマインドフルネス仕事術』

マインドフルネス書影2

川野氏がマインドフルネスを解説する本書。序章では、「そもそもマインドフルネスとは一体なんなのか?」「どんな効能があるのか?」といった素朴な疑問を一から解消していきます。

第1章では、「呼吸瞑想」「歩行瞑想」など、マインドフルネスを実践するための 基本的な方法を解説。

第2章では、マインドフルネスを実生活において活かすための具体的な方法をお話しします。「満員電車が辛い」「仕事中に集中が途切れる「休日も仕事のことが頭を離れない」など、現代ビジネスパーソンのストレス源を14 点 取り上げ、「つり革瞑想」「キーアクション」などの解決策を図解入りで示しています。

第3章では、現代においてマインドフルネスが求められる背景と、科学的エビデンスを検証。

第4章では、マインドフルネスを習慣にした人がどのような変化を得られ、周囲にどんな影響をもたらしていくのかをお伝えしていきます。

 

目次

  • 序章 脳をクリアにするマインドフルネスとは
  • 第1章 マインドフルになる方法

・基本メソッドその① マインドフルな思考法

・基本メソッドその② 呼吸瞑想と歩行瞑想

  • 第2章 仕事のストレスをなくす14のメソッド

出勤前のストレス/集中できないストレス/マルチタスクのストレス/失敗した時のストレス/アイデアが出てこないストレス/疲れが取れないストレス……

  • 第3章 なぜ今、マインドフルネスなのか

・世界のトップリーダーが熱中する理由

・仕事のパフォーマンスを高める10の効能

  • 第4章 マインドフルネスは生き方を変える
  • 読者特典 毎日快適にはたらく!「疲れ」解消事典

 

編著者より

 

現代ほどストレスと疲れのマネジメントが求められている時代はありません。

激化する一方の競争社会の中で、多くのビジネスパーソンは疲弊しきっているように見えます。その歪みが、過労死やうつ病、燃え尽き症候群といった形で表出し始めています。

これは、体に鞭打つだけの働き方には限界があることを示しています。現代のビジネスパーソンは、自分の心身の状態に目を向け、常にコンディションを整えていくことが求められます。

これらを可能にしてくれるのが、「マインドフルネス」です。

マインドフルネスは、ストレスや疲労を取り払い、脳をクリアにしてくれます。

そこで、現代における新しい働き方を発信する事業を手がけている私・柳内啓司は、マインドフルネスについて教えを請うべく、禅僧であり精神科医でもある川野泰周先生の元を訪ねました。

先生は、精神科医として禅やマインドフルネスの手法を積極的に取り入れた診療をなさっているほか、マインドフルネスに関する講演・ 講義を行ったりと、幅広く活躍されている方です。結果、現代のビジネスパーソン が抱える多様な問題をマインドフルネスの力で解決してきた先生ならではの、忙し いビジネスパーソンでも気軽に実践できるような教えをたくさんお伺いできました。

この世に生きている限り、ストレスが完全に消え去ることはありません。けれど、 適切な向き合い方はあります。

本書が、現代に生きるビジネスパーソンにとって、ストレスからの解放と継続可能な働き方を示すものとなれば幸いです。

柳内啓司

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