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ぽっちゃり旅女子にオススメ! どんどん痩せる、西アフリカダイエット!

世界中をめぐる著者が、現地の健康情報を毎週お届けします。

思い出の数だけ太る旅行。

軽自動車で地球を流す、バガボンド夫婦です。
旅をお金に変える才覚はなく、いまさら人生が変わることもなく、探すほどの自分もいない、意識ゆるい系です。
ここのところ生きるだけで精一杯でして、すっかり痩せました。
妻Yukoは、歩きながらにして短パンが膝落ちすること数回。
拙者もベルト穴がふたつ移動し、ズボンの裾を引きずっています。
張りのなくなった腹部と、シワの増えた臀部。垂れた胸。
痩せるほどに、芳醇さが増す加齢臭。なんとなく、酢の物系に匂います。

普通は旅行するとなると、朝から晩までご当地料理を食べ尽くし、自意識過剰にデコラったスウィーツを頬張り、正体不明の屋台料理を肴にビールを呑みまくります。
また、旅の恥をかき捨てるついでに、日頃の鬱憤や常識までも捨て去るので、ほぼストレスフリー。
思い出の数だけ太るのが、旅行なのです。
もし太りたくなければ、インド。
否が応でも、下痢ダイエットできます。
ただ、腹下し系ダイエットはカラダに悪いし、かっこ悪い。しかもちょいと臭い。
そこで新しい痩身旅行を紹介いたします。
西アフリカダイエット。
ついさきほど名付けたばかりの本邦初公開。
基本は、食欲を減らすこと。
そしてさまざまなストレスを加味し、心身ともに痩せるのです。

 

胃が痛くなる路上検問。

西アフリカと呼ばれる一帯は、モーリタニアから赤道が横切るガボンまでのひと塊りです。
名前すら聞いたことのない国から、アフリカの北朝鮮と呼ばれる独裁国まで、100%天然ブラックな20カ国。
石焼ビビンバで顔を洗うくらい暑く、マリに入ってからは感情的体感温度は50度。呼吸するだけで燃え尽きそうな熱帯夜。
完全に食欲が失せます。
ナニかを食べなくてはと思うものの、美味しそうな料理やレストランは見当たりません。
ローカル食堂にあるのは、味のはっきりしないスープと丸くこねた芋。しかもこの芋が、腐ってんじゃないかってくらいの酸っぱさ。
眺めただけで、腹一杯です。

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毎日食べていたのは、オクラ。

食欲がなくなれば、次にストレス。
さまざまなフラストレーションが、確実に脂肪を燃焼します。
値段が高いわりに一筋縄ではいかないビザ申請は、西アフリカにおける宿便的ストレス。理由もなく何日も待たされたり、ときには大使館で説教を喰らい、ときには申請を拒否されます。
もし1カ国でもビザを受け取れなかったら、進退極まり軽自動車を捨てねばならぬ我が家。車を日本に持ち帰らなければ、免税のための補償金200万円が没収され、おまんまの食い上げです。
四六時中、胃の腑に漂う200万円分のプレッシャー。
抜け毛が増えるわけです。

胃が痛いのは、路上検問。
警官や軍に呼び止められると、強盗の100倍怒気の含んだ顔で、「違反だーーーっ!」と怒鳴ってきます。
ライフル片手に難クセをつけ、金をむしり取るカツアゲです。
ナイジェリアの検問は、1日25回。
怒鳴り散らすだけの直情型や、もっともらしい書類を手にして入会費を迫る戦略家。消火器不携帯を罪状に罰金を科す輩、普通にTシャツを着た連中もいるややこしさ。
ネギを背負って鍋の中を泳ぐようなアウェー感で、胃を満たすのは、胃酸だけなのです。

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不気味な体操でお金を請求する、芸なきパフォーマー。彼の芸もまた、ストレスの種です。

宿ですら、気は休まりません。
大枚をはたいてエアコン部屋に泊まっても、毎晩のように停電。
断水も多々あり、加齢臭の染み付いた脂汗がガムテームのように貼りつく不快感。流れないトイレもまた、たとえそれが自分の分身であったとしても、地味に心を蝕みます。
そして、亀より遅いWi-Fi。
一発食らったら死にかねない、マラリアの恐怖。
破れた網戸に涙を流し、蚊帳のなかを飛ぶ蚊に鼻水を吹き出したものです。

そのほか、テロ、イスラム過激派、誘拐、雨季、洪水、巨大な道路の穴と緊張が続きますが、一匹の動物にもお目にかかれぬがっかり感。
西アフリカダイエットは、修行です。

石澤義裕(いしざわ・よしひろ)
デザイナー。1965年、北海道旭川市生まれ。札幌で育ち、東京で大人になる。出版社勤務、デザイン事務所、編集プロダクションなど複数の会社経営の後、2005年4月より建築家の妻と夫婦で世界一周中。生活費を稼ぎながら旅を続ける、ワーキング・パッカー。世界中の生の健康トレンド情報をビジネスライフで連載中。

 

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