MENTAL

つまらない仕事を「遊び」に変える科学的テクニック

Written by 鈴木祐

仕事がつまらない。働きたくない。できることなら毎日遊んで暮らしたいが、生きるためにはそうもいかない……。

そう思ったことがあるなら、朗報だ。年に5000本の科学論文を読み続けるサイエンスライターにして、7万部突破の話題書『最高の体調』の著者・鈴木祐氏は、「仕事を含む現代生活を『遊び化』し、楽しみながら成果も上げる方法がある」と言う。

一体どんな方法なのか、鈴木氏に解説してもらった。


現代人特有の悩み『文明病』

文明の発達した現代にはたくさんの刺激がある一方、『漠然とした不安感』や『なんとなくつまらない、楽しくない』という感覚を抱えている方も増えています。このような現代人特有の悩みを『文明病』と呼びます。解決のためには、それに侵される以前の時代、狩猟採集民の環境が参考になります。

現代生活を『遊び化』する方法においても同様です。先進国と、狩猟採集民の環境を「遊び場」としてとらえなおし、私たちと狩猟採集民の遊びにどんな違いがあるかを見ていくのです。

【遊び化のポイント1】シンプルなルール

まず違うのは、狩猟採集民の世界は「遊び」のルールがシンプルな点です。同じ時間に狩りへ出向き、獲物を仕留め、仲間たちと食料を分かち合い、あとはみんなと歌って踊る。彼らの生活ルールはこれだけで、つねに自分が行うタスクがはっきりしています。

ただし、これは狩猟採集民の遊びが簡単だという意味ではありません。自力で素材を集めて弓矢を作り、200〜300種類を超える野生動物の生活パターンを記憶し、砂や泥に残る痕跡をもとにターゲットの狙いをつける作業は、いずれも高度な認知機能が必要です。この点で狩猟採集民の遊びは、チェスや囲碁のようにシンプルながらも奥深い構造を持っています。

「ルールが整備されていない遊び」はプレイヤーのやる気を削ぐ

いっぽう現代の生活環境はどうでしょう?

長期にわたってローンの支払い計画を立てたり、初対面の人に商品を売り込まねばならなかったり、面識のない政治家に一票を投じさせられたりと、ヒトの脳にとって「新しすぎる」タスクを次々と要求されます。

しかも、そのルールは社会システムが変わるごとに変更され、キャッチアップしていくだけでも一苦労。ルールが整備されていない遊びほど、プレイヤーのやる気を削ぐものはありません。

【遊び化のポイント2】フィードバックの即時性

さらに違うのが、フィードバックの即時性です。

良くデザインされたゲームは、プレイヤーにすぐ反応を返すように設計されています。シューティングゲームで敵を倒すたびに得点が入ったり、RPGで新しい武器を手に入れたキャラの攻撃力が上がったり、プレイヤーが失敗したらステージの最初からやり直しになったりと、目に見える形でなんらかの変化が起きないと、プレイヤーはゲームを先に進めるモチベーションが得られません。

この点で、狩猟採集民の暮らしは合格です。狩りに出れば獲物が手に入るかどうかはすぐにわかり、弓矢を作ればその場で性能を試すことができ、建材を組み上げれば半日で住居ができあがります。自分が立てた仮説の妥当性はすぐに検証され、プレイヤーのモチベーションも維持されるのです。

モチベーション不足の現代生活

ところが、先進国ではそうもいきません。

自分の行動に即時のフィードバックがあることは少なく、たいていはひとつのプロジェクトが形になるまで数カ月を要し、社会で使えるスキルが身につくまでは数年かかり、それまでは達成感のない毎日が続きます。自分がどんなに良い手を指しても、相手がいっこうに次の駒を動かしてくれないチェスのようなものです。

その結果、あなたの満たされない欲望は、ネットニュースやSNSのように、即時のフィードバック性を持つ媒体に向かいやすくなります。ブラウザを立ち上げれば新しい情報が得られ、インスタグラムに写真をあげればすぐに「いいね!」を得られるからです。

が、これらの反応は脳の快楽システムを疲れさせるだけの超正常刺激にすぎません。刺激の質はファストフードやお菓子に近く、摂取しすぎれば、やがて反応の快楽だけを求めるフィードバックゾンビと化すことになります。


→NEXT:ポイントは「ルール設定」と「フィードバック化」


About the author

鈴木祐 

サイエンスライター

サイエンスライター。1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。近年では、自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。また、ヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。著書に『最高の体調』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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