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BMIでわかる死亡リスク―長生きできる適正体重を知ろう

世界の最新医学論文から、現役医師の気になるトピックをお届けします。

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太りすぎor痩せすぎは数値でわかる

 

最近、世の中は男性向け・女性向け問わず多様なダイエット戦略で溢れています。しかし医療者としては、それらにストップをかけたくなることがあります。

もちろん、太りすぎは健康に良くありません。肥満は動脈硬化(ひいては心筋梗塞や脳梗塞)、高血圧、睡眠障害などと関連していることは一般的にも浸透していると思います。一方、痩せすぎも低栄養状態、免疫能低下を来すことは、なんとなく想像可能かと思います。

しかし、太りすぎ、痩せすぎといっても、具体的にどれくらいの状態を指すのか。

 

BMI(Body Mass Index)という言葉はご存知でしょうか。

2008年、「メタボリックシンドローム」という考え方が我が国の「特定健診・特定保健指導」の中で取り入れられてから、BMIも一般的と言って良いほどの認知度となりました。BMIは医学業界で研究や臨床現場で日常的に使用されている、肥満の尺度ですBMIは、

BMI=体重÷身長(m)÷身長(m)

の式で算出され、18.5以上25未満になれば普通体重、18.5未満なら低体重(痩せすぎ)で、25以上の場合が肥満となります。

 

weight check

体重から算出できる死亡リスク

 

このBMIという尺度において、死亡リスクが最も低い数値軍はどれかという研究が、2016年11月、BMJ(元British Medical Journal)という信頼度の高い医学誌に掲載されました。

 

アメリカ・ワシントン大学のNicola Veronese氏らは、「Combined associations of body weight and lifestyle factors with all cause and cause specific mortality in men and women: prospective cohort study」(体重と生活習慣因子の死亡率(男女)との関連性)という論文において、最長32年間、40〜75歳の男性5万1529人と、30〜55歳の女性看護師12万1701人を研究対象としました。さらに、参加者のうち研究開始時に心血管疾患(心筋梗塞や大動脈瘤など)・癌と診断されていた人は対象から除外するなど、適正な研究となるよう調整を加え、研究対象から男性3万9284人、女性7万4582人を実際に分析しました。

 

この研究では、生活習慣因子として、「食生活」「身体活動量」「飲酒量」「喫煙経験」という4項目を設定し、「Healthyな生活習慣」として、

  • Alternate Healthy Eating Index Score5段階のうち上位2段階に含まれる
  •  1日30分以上の中等度〜強度の運動
  • 1日に女性5〜15g、男性5〜30gの飲酒量(エタノール換算)
  • 喫煙経験なし

を定義。上記各因子を0か1かで判定・合計し、0〜4点で生活習慣のHealthyレベルを分けました。

 

Alternate Healthy Eating Index Score(代替健康食指数)とは、これまでの研究において心血管疾患や糖尿病、癌のリスクとの関連が報告されている、食生活の評価方法です。全粒穀物や多価不飽和脂肪酸、ナッツ、オメガ3脂肪酸の摂取量が高く、赤身肉、加工肉、精製粉、甘味料飲料の摂取量が低い食事を良しとしています。この指数は2015年2月、これまた医学誌BMJにおいて、COPD(慢性閉塞性肺疾患・主に喫煙により成る呼吸器系の疾患)との関連も示唆されています。

 

また飲酒量のエタノール換算について補足すると、アルコール度数5%の350ml缶ビールに含まれるエタノールは約13.8gとなりますので、Healthyという観点でいくと、女性は1日缶ビール1本、男性は2本程度に止めておくのが賢明そうです。

 

Portrait an unknown male doctor holding a stethoscope behind

死亡リスクが低い人のBMIはどのくらい?

 

さて、この研究では、32年間で最終的に3万13人の死亡が確認されました。

死因は癌が1万808人、心血管疾患が7189人。BMIと死亡率の関係は男女ともにU字カーブとなり、BMI22.5〜24.9の人達が、それより高い人達・低い人達と比較し、最も死亡リスクが低かったのです。

 

ここで「BMIだけを見て死亡リスクとの関連を述べていいのか」という疑問が生まれるでしょうが、医学研究ですから、「影響を与えてしまう恐れのある因子として、年齢、人種、ビタミン剤の使用、アスピリン(動脈硬化による病気に対して用いられている薬)の使用、ホルモン補充療法、糖尿病・癌・心筋梗塞の家族歴などを考慮し、これらの影響を統計学的に補正したとしても結果は変わらなかった」と言及されています。

しかし唯一、喫煙歴のある人を除外して分析すると、BMI18.5〜22.4の人達が最も死亡リスクが低いという結果になりました。

 

Wellness sign with wooden cubes

ものすごくHealthyな生活を送っていれば…

 

加えて、先述の生活習慣のHealthyレベルも合わせていうと、3点以上、つまりHealthyな生活を送っている人達では、BMI18.5〜22.4の人達も、22.4〜24.9の人達も、25.0〜27.4の人達も、統計学的に死亡リスクに差がなくなることもわかりました。つまりものすごくHealthyな生活を送っていれば、体重はそれほど気にしなくてよい、ということになります。

 

また、「BMI22.5〜24.9だけど生活習慣Healthyレベルは0点」という人達と比較すると、「生活習慣Healthyレベル3点以上かつBMI18.5〜22.4」の人達が最も死亡リスクが低いことがわかりました。数値でいうと相対的に、総死亡リスクは61%、癌死亡は60%、心血管死亡は63%低い。喫煙歴のない人のみを対象にした場合でも同様に、総死亡リスクは55%、癌死亡は53%、心血管死亡は59%低いという結果でした。

 

Man standing on balance

まとめ―長生きするための適性体重を知ろう

 

まとめると、


  • 全体でいうと死亡リスクが低いのはBMI22.5〜24.9の人
  • 喫煙歴のない人でいうと死亡リスクが低いのはBMI18.5〜22.4の人
  • ものすごくHealthyな生活を送っている人はBMIに厳しくならなくても良いかもしれない
  • とはいえ、一番死亡リスクが低いのはHealthyかつ、BMI18.5〜22.4の人

ということです。

 

日本人男女の平均身長から算出すると、Healthyな生活を送った上で、


  • 身長170cmの方なら53〜65kg
  • 身長158cmの方なら46〜56kg

に体重をコントロールしてみてはいかがでしょうか。

 

福田芽森 Fukuda Memori東京女子医科大学卒、循環器内科5年目。日本医師会認定産業医、ACLS(アメリカ心臓協会二次救命処置)インストラクター、JMECC(日本内科学会認定内科救急・ICLS講習会)インストラクター。高校時代にアメリカ、大学時代にベルギーに短期留学。趣味は登山、弓道(三段)、芸術鑑賞、海外旅行。